[mathjax]
はじめに
単なる「指標」を寄せ集めて経営管理の材料としている例は、数多くあると思います。経営管理に使える数字(=指標)は数多くあり、それが役に立たないと申しているのではなく、それらの数字一つ一つが、経営目標に対して、どんな役割や意味をもっている数字なのか?がよくわからない状態のまま数字でマネジメントをおこなっても、数字に振り回されるだけで、結果的に役に立たない数字、使われない数字になっている例が散見されるので、ここで改めて、KPIをテーマに書くことにしました。
KPIとは?
Key Performance Indicatorの略が、KPIです。
- Key Performance=事業の成功(ゴール)に直結しているカギ
- Indicator=指標
です。前述したように経営管理に使える数字はたくさん存在します。その中でもその事業のゴール達成に直結している「最も重要な数字」がKPIです。というわけで、「KPIは1つ」しかありません。
KPI策定の手順
おおまかにいって、3段階あります。
- KGI(Key Goal Indicator)=事業の最終的な目標数値
- KFS(Key Factor for Success)=そのゴールを達成するうえでの最も重要なプロセスで、このプロセスがうまくいくか否かで、その事業の成否を左右する分岐点。KSF(Key Success Factor)やCSF(Critical Success Factor)とも
- KPI(Key Performance Indicator)=最重要プロセスの進捗度合い、つまり生産性をあらわす指標
このKGI→KFS→KPIの順番で、KPIを決めていきます。この順番が逆になってしまっては、まったく違った意味の数字ができあがってしまいます。
そもそも生産性の指標って?
生産性指標の意味するところは、その対象となる事業への「インプットとアウトプットの割合」です。インプットしたものに対して、どれだけアウトプットできたか?です。
$$\frac{OUTPUT(=事業のP/L要素)}{INPUT(=事業のB/S要素)}$$
さらに、詳しくいうと、インプットとは、その事業をおこなうための経営資源ですので、財務諸表のB/Sにある内容です。逆に、アウトプットとは、その経営資源を使ってどのような経営成績を残したのか?ですので、財務諸表のP/Lにある内容ということになります。
KPIの大親分
ファイナンス上、最もシンプルで重要な指標に、「ROE」があります。KPIの頂点に君臨する大親分みたいなものです。
- ROE=Return On Equity、株主資本純利益率。
投下した株主資本(=自己資本)に対して、どれだけの税引後純利益を稼ぎ出したか?がこの指標の意味するところですが、これを先ほどの生産性の式のかたちで書くと、以下のようになります。
$$ROE=\frac{税引後純利益}{株主資本}$$
KPIを決めていく工程に当てはめて、これを少し「プロセス」を意識して、ちょっと「インプット要素とアウトプット要素に分解」をしてみると、わりと見慣れた数字にすることができます。
時間軸を意識して、左から右に流れていくように、プロセスを分解していくと・・・
$$ROE=\frac{総資産}{株主資本}\times\frac{売上高}{総資産}\times\frac{税引後純利益}{売上高}$$
一つ目は、財務レバレッジ。二つ目は、総資産回転率。三つ目は、売上高純利益率といった経営指標に分解することができます。
- 財務レバレッジ=株主資本を元手にして、どれだけ資産を増やしたのか?
もっというと、株主資本をテコ(=レバレッジ)にして、どれだけ金融機関などの投資家から資金調達したのか?をあらわしています。 - 総資産回転率=そうして集めた資産をつかって、一体、何倍の売上を稼ぐことができたのか?をあらわしています。
- 売上高純利益率=そして、最終的な経営成績として、売上高に対して、どれだけの純利益をうみ出すことができたのか。
つまり、リスクマネーを提供してくれた株主への配当原資として、どれだけの利益を還元できるのか?をあらわしています。
このように、その「プロセス」と「数字」を組み合わせていくと、指標のもつ意味が格段に理解しやすくなってきます。
次項は、KPI策定の工程にあわせて、さらに細かくプロセスを分解して、さまざまなサンプルを事例として出していきます。